ノーベル賞受賞学者大村智教授「ストックホルムへの廻り道」に学ぶこと

長崎県立大学佐世保校の土曜集中講座「地域振興論」の往復約4時間は、日ごろ読めない本を読む恰好の時間です。5月9日の大村智北里大学特別栄誉教授(ノーベル生理学・医学賞受賞)の講演で配られた氏の書籍「ストックホルムへの廻り道」(日本経済新聞社)を今日の往復で読み上げました。自叙伝なので、淡々と描かれていますが、充実した人生を送る人に共通したヒントが幾つも盛り込まれています。「人生の分かれ道」という部分で、東京理科大学で博士号を取って、1971年、36歳で、アメリカにはばたく際に、複数の大学からオファーを受けますが、その中で、給与は他大学の二分の一ではあるが、ポスドクではなく、「客員研究教授」として迎えるというウエスレヤン大学のテイシュラー教授に行先を決めます。同教授は、大手製薬会社のメルクの研究所長を務めた中興の祖と言える方であると考え、実力のある人物に付くという選択をしているようです。これが、その後大村氏がその後、メルク社と取引をする大きな切っ掛けになったと推察します。直接には1972年、のちにメルク社の会長となるワシントン大学医学部ロイ・バジェロス教授との共同研究を開始したことが大きなチャンスとなったと思います。1977年、研究者の領域を超えて北里研究所大村室、その後北里研究所の経営に乗り出しますが、その際に、メルク社他の製薬会社との産学共同が、経済面・人脈面で大きな支援材料となったことは想像に難くありません。大村先生は、民間企業から得た資金を、後進のために残したり、研究所の投資に回したり、先見性をもって使っていくことにされたことも学ぶべきことだと思います。そして、この本を読んで驚いたのは、85歳になられた今でも、毎月数件の講演をこなしておられていますが、1998年(63歳の時)リンパ腫に罹られて、CHOP療法で完全寛かいされ、その後、前立腺がんに罹られ、2006年摘出手術を受けられたことです。人生は何があるかわかりませんが、自分の信じた道を歩むことが最高の生き方であると感じました。

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