コロナウイルス後の世界に向けて

コロナウイルスの感染が日本でも2月ころから急拡大して、4月7日に政府が5月6日までの期限付きで緊急事態宣言を出し、さらにそれを、5月31日まで延期しました(途中で解除の可能性も留保)。私は、5/8に提言書「コロナウイルス緊急事態宣言を受けた長崎への低減―コロナ後の世界に向けて」(未定稿)をまとめました。感染症で経済が悪化したのは、歴史上何度かあり、ペストが有名ですが、幕末1858年の、長崎から感染が広まったコレラ、1918-1929年のスペイン風邪、近年でもSARS,MERS等経験してきており、そのたびに克服してきました。コロナウイルス感染の経済影響は、1929年の大恐慌や2007-2008年のリーマンショックの時とはおおきくことなり、「消費喪失」がいきなり起こったことに特徴があります。金融恐慌とは異なり、経済・金融システム、生産システムが壊れたわけではありません。しかし、これまでの感染症と異なり、ワクチンや治療薬が開発されていないこと、このまま感染が終息すればいいが、長期化すると、経済社会の大きな影響を与える可能性があるのです。

「コロナ後の世界」がどうなるのかに、皆さんの関心が集まると思います。結論から申し上げると、現在の日米の経済指標に見られるように、目先大幅な景気後退が起こりますが、1-1.5年後に回復していくと考えられます。V字回復は難しく、U字回復またはL字回復の可能性があると考えています。回復時、これまでの経済社会そのままであるのではなく、半分は従来の世界が戻りますが、半分は根底から大きな社会変化が起こると思います。数字や詳細は、提言書を読んでいただきたいと思いますが、大きく変わる部分は、「変化時間の短縮」「加速化」だと思います。これは、今までも、Society5.0や、第四次産業革命が徐々に起こってきましたが、今後1-2年の間に、ICT・デジタル経済の導入が生活・社会の間に、急速に進むと思います。

観光業についても、今は人の移動が制約を受けていますので、観光客数・観光消費額ともに落ち込んでいますが、半分は従来の形の国内・インバウンド観光が戻ると思います。3-5月は自粛要請から、感染を抑制するために、家に籠ったり、地域から移動することが規則的・心理的制約を受けてきていますが、だんだん人の移動が戻っていくと思います。江戸時代には住んでいる地域から他地域に移動することが制約された時期がありましたが、一方で「お伊勢参り」のような合法的な観光手段がありました。現在は、自粛要請が無くなったら、完全に戻る可能性が高いと思います。ただ、残念なことに、1-2年の間、景気が落ち込んだり、事業の廃業・労働者の失業等の要因で経済力が落ちて、観光する経済的余力がなくなることが考えられます。特にインバウンド観光は、国際間移動に関する航空会社・ホテル事業の回復までに時間がかかる可能性があるので、マクロでみれば、インバウンド観光の回復が最も遅くなる可能性があります。すなわち、観光需要が回復しても、観光サービスの供給体制が戻るには時間がかかる可能性があると思います。このように、国内観光が観光客数として戻ってきたとしても、「マイクロツーリズム」のように、かつて「安近短」と言われてきた観光が増えて、今後3年間くらいは、観光消費額は低い水準にとどまる可能性があります。

こういった事態に対応するには、提言書にも提案しているように、「ハイクラス観光」「富裕層向け観光」「目的型観光(MICE/IR等)」の比重を高めていくことも、コロナ以前と比べてはるかに重要になると思います。観光分野でも、「観光の進化」が急速に進展すると考えられます。

消費行動自体、「本当に必要なもの」「なくてはならないもの」「将来に備える消費(災害対応・備蓄)」等、無駄を排除した消費が当面優勢となると思います。今回のコロナウイルス感染拡大により、「無くてもいいもの」が浮き彫りにされました。したがって、当面1-2年の間、所得の減少とも相まって、デフレ心理が台頭すると考えます。ただ、富裕層等の市場は、引き続き拡大し、上記の観光と同様、消費の「二極分化」が進むと考えます。また、消費するのに店に行ったり、現金決済する必要は必ずしもなくて、ネットでの消費がこれまで以上に急速に進展すると思います。

しかし、「ピンチはチャンス」であることは事実で、ICT等先端技術、観光、消費それぞれに、大きなチャンスの芽が育っていきます。時代の先を読んで賢く決断し、行動できた人や企業が、コロナ後の世界の勝者となることは、今回も起こると思います。

画像1588933137292

カテゴリー: 世界日本経済, 医療福祉, 投資, 科学技術, 経営, 観光,   パーマリンク

コメントは受け付けていません。