バークシャーハザウエイの「株主への手紙2019」について

アメリカの著名投資家・ウオーレンバフェットのバークシャーハザウエイ株主に宛てた「Letter to shareholders」は毎回欠かさず読んでいます。26歳の時に、アメリカでバフェット氏に会ってから、投資にさらに興味を持つようになりました。当時の日本には、「国際分散投資」という考え方がまだ浸透していませんでした。今回2019年の手紙で特徴的なのは、2018年の運用で、それ以前ほど大きな利回りを上げることができなかったこと、アップルのようなハイテク企業投資を開始していたことです。バフェット氏は、「バリュー投資」が主流で、日常生活に密着した利益成長が見込める優良株式を中心に投資していましたが、本人とマンガー以外の方の意見で、投資を決定したものです。キャッシュリッチな寡占的成長企業であれば、技術の栄枯盛衰が激しいハイテク企業であっても、ある程度高いPERであっても容認されるということでしょう。あるいは、私の研究分野の一つである、AIや5Gなど、技術のイノベーションが世の中をすっかり変えてしまうことを市場が予想しているのかも知れません。いずれにしても、アメリカ市場の投資家の層の厚さと、リスクを取れる企業体質・体力があるからこそできると思います。とはいえ、従来の4つの分野と、保険業界への投資は不変で、以前として高い収益性を上げていることは確かです。これらのことはある程度アメリカ株式投資全般に言えることで、暴落があっても持ちこたえられる投資が王道だと思います。日本の株式を増やしたい場合は、企業をきわめて厳選しなければならず、過去のパフォーマンスを見ても、成長を続けているブランド力のある安定企業は、日本には多くありません。投資は、いわばファイナンス分野の総合芸術で、能動的に運用する場合は、恐怖と欲望(期待)のはざまで心のコントロールを求められる作業です。30歳の時に、銀行として、アメリカのアライアンスキャピタルと年金運用分野での提携を交渉するために、ニューヨークの会社に当時の会長に会いにいったのを今でも覚えています。私はそのころ、銀行にとって次の成長分野である証券部門の企画を担当していました。両側に絵画が幾つも並んでいる廊下の一番奥の部屋で、老練な会長は、アジアから来た山猿を見るような鋭い目つきで私を見たことが(そう感じただけかもしれません)今も蘇ってきます。私は、アメリカの投資家の心の難しさを感じ、自分は、投資を職業にすべきではないと思いました。その後証券アナリストの資格を取り、企業を見る目、分析という点で役立っていますが、企業を見極める基本は、経営者への面接が最も重要だと思います。今回の、バフェット氏の手紙を見ていて、時代を経ても変わらない投資の基本方針と、時代に応じて変わらなければならない投資の対象・手法があることを、改めて痛感しました。(画像は26歳当時の私。シカゴの街角でバスを待っている時。小売業のシアーズローバックが多角化で成長を続けていた時代。シカゴでのCME会長レオ・メラメド氏と何度かお会いし、影響を強く受けた時期。)

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