飛行機で読んだ一冊の本⑭~「名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方」「三尺寝若き一日の夢を見る」

夏の暑い日が続き、疲れが溜まってくるころではないかと思います。8月4日東京都庁の会議からskymark最終便で神戸経由長崎に戻り、5日6日は体調を整えるために長崎でゆっくり過ごしました。「三尺寝若き一日の夢を見る」(原句:まどろみて緑陰渡る若き風)。「三尺寝」とは、昼寝のこと。夏の土日の昼寝は楽しい。昔は、夏は軽井沢や蓼科や箱根に避暑に行っていましたが、その後ハワイに変わり、今はひっそりと長崎リゾート生活を楽しんでいます。

8月3日の長崎から東京に移動する飛行機で読んだのが、鈴木康之著「名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方」でした。「コピーの名作」と言われる作品を集めた良書で、僕が講演したりコラムや書籍を書いたり、テレビ・ラジオに出演するときのヒントが満載です。僕は、文章やコピーを読んでくれるだけでなく、記憶に残ってもらうためには、「感動を与える」ストーリーも一つの手段ではないかと思ってエッセイなどを書いてきました。この本に紹介されている数ある「名作」の中で、鬼塚喜八郎「失敗の履歴書」ほど印象に残るものはありません。「品質に自信のあるシューズが生まれた。しかし、知名度が全くなかった。販路もなかった。自ら行商に出た。地方を回った。旅館には泊まらず駅のベンチで寝た。ろくなものを食べてなかった。やがて肺結核にかかった。(中略)会社の4畳半の宿直室に布団を敷き、闘病生活が始まった。喉まで結核菌に冒され声帯が破壊されて声が出なくなった。毎朝社員を病床に呼び、言いたいことを紙に書いて仕事を続けていった。死期が近づいていることを感じていた。(中略)次はマラソンシューズの開発に没頭した。走るとマメができて当然。マメを克服してこそ一流という時代だった。しかしマメができないシューズがあれば、もっといい記録が出るはずだと考えた。早速マラソンに関する文献を貪り読んだ。欧米の研究書や日本の特許もくまなく調べた。しかしまだ科学的に研究されていない時代であり、答えはどこにも見つからなかった。」(p.113-114)アシックスの創業者の物語です。畳みかけるような展開に、最後まで読みたくなる文章です。こんな文章が書けたらと思います。

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