震災復興と長崎県経済

6月29日開催された長崎県産業振興財団の理事会で、冒頭松尾理事長の挨拶の中で、私が執筆し、長崎新聞5月5日付けコラム「うず潮」に掲載された「震災復興と長崎県経済」を全文読み上げていただきました。大変光栄なことと思いました。企業誘致・地場産業振興を含め、国家にとって大事な時期であるからこそ国力を落とさないためにも長崎県が取り組まなければならない方策を提示しています。本文は次の通りです。
東日本大震災から一か月以上が経過し、わが国の復興に向けた取り組みが行われる中で、長崎県経済もプラス・マイナス両面の大きな影響を受ける可能性があります。特に、アジアとの交流に関し、国家レベルのグランドデザインと並んで、長崎県としても震災に伴う人流・物流の変化をどのようにとらえ、いかに戦略を立てるかが重要です。その場合、人(観光客)も物(輸出入・生産活動)も一旦わが国を離れてもまた戻ってくるときに、長崎県が受け入れられる新たな戦略が必要です。
第一に、人流については、震災と同時に発生した原子力発電所の事故などの影響により、わが国への国際観光客(アジアなどから)が目先減少しており、事態の鎮静化に伴いいずれ戻ってくると考えます。今後地域を選択する場合、地域と運送手段の魅力と利便性・安全性を有効に情報発信できた地域が優先される可能性が大きいと思います。この点で現在準備が進んでいる上海航路が、福岡・鹿児島等との競争上も重要な運送手段になると思われます。
第二に、物流(貿易を含む)については、長崎県の移出・輸出製品が、安心・安全であることのアピールが何よりも必要であり、特に食品については、全国向け販売やアジア向け輸出を増加させる大きなチャンスになると思います。
第三に、企業活動については、大変不幸なことに、東日本に工場等生産拠点を置く製造業が、これら拠点を関西以西に移動する可能性や、アジア・北米等海外にシフトする可能性があり、大規模なサプライチェーンの見直しが行われると考えます。わが国にとってはできるだけ生産拠点を国内に維持することが望ましいですが、自動車・電子機器等グローバル企業にとって、資材・人材調達により生産を安定的・低コストで行える国・地域に生産拠点を置くメリットは大きいのです。従って、国内では長崎県への企業誘致を進めるとともに、アジア向け拠点シフトが起こった場合でも、円安(アジア通貨高)傾向を活かしながら、一定の加工組み立てが地域でできるような優遇政策を打ち出すことが必要ではないかと思います。

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