企業経営に投資家の視点を

日本がどこまで資本主義の国家であるかは別にして、資本主義体制をとる限り、企業の経営者は投資家にとって魅力ある企業にすることが必要であるし、また、その努力が資本の効率的運用を通じて、望ましい経営に導く可能性が高いことは言うまでもありません。もちろん従業員を大切にしなければ、資本だけでは良い経営はできません。「バフェットからの手紙2010年版」は投資するに値する企業像について、①優秀な経営者、②資本配分・収益の再投資の柔軟な実施、③株主視点で事業経営を行う企業文化、を上げています。①優秀な経営者とは、ここでは、「強い忠誠心を持って好きだから仕事をする経営者」です。「良い人を雇い、管理はしない」ということもその表れです。②資本配分・収益の再投資の柔軟な実施とは、定期的に各事業の価値を比較しながら、類似事業を行う上場企業の価値とも比較しながら、価値を算定し、その結果によって資本配分を行います。バフェット氏の例では、シーズキャンデーやビジネスワイヤーの投資収益から、BNSF(サンタフェ)鉄道買収のための資金をねん出したのです。③株主視点で事業経営を行う企業文化とは、単なるサラリーマンではなく、オーナーの目を持って事業経営を行うことです。そして、企業文化は自己増殖するもので、官僚的な行動がさらなる官僚制を生じさせるし、過度に立派なオフィスは傲慢な行動を誘発します。バフェット氏が経営するバークシャーハザウエイ社の本社賃貸料は年間27万ドルだそうです。株主のお金を自分のお金と同じように大切に扱い、株主を犠牲にして経営者だけにメリットのあるストックオプションや自社株式の割り当ては行わないなどの行動に反映されます。日本の企業が国際競争力を維持しながら成長するためには、こうした投資家の視点が不可欠ではないでしょうか。

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