長崎新聞掲載「上海航路成功の条件」

11月3日、上海航路試験航行開始に伴い長崎新聞朝刊に寄稿した全文を掲載いたします。
 ■魅力ある長崎の都市作りと港の発展を目指して-上海航路を成功させるための条件
(財団法人ながさき地域政策研究所常務理事・菊森淳文)
 上海航路が計画されている通り、週2~3便の定期航路になれば、中日両国の旅客をはじめとした国際旅客輸送・同貨物輸送を飛躍的に増加させることが可能となり、長崎県発展の大きな起爆剤とすることができる。
 上海航路の乗客にとって、上海とは異なる風景、印象、また国際観光船の乗客などにとっても、長崎特有の地形・特色、女神大橋を含む空間、特異な歴史文化、夜景を含む港の風景が他港にない魅力であり、この地形を生かした街づくり、港湾づくりが客船寄港・コンベンションを含む集客産業都市実現の大きなポイントになる。
 ハード面では、上海航路、国際観光船両方をスムーズに受け入れることのできる港湾整備が求められるが、加えて、港の風景のレベルアップと歓送迎演出力を高めるために、例えば女神大橋ならではのパフォーマンス、LED照明のさらなる活用による歓迎機能の付与が有効策となる。ソフト面では、歓送迎演出力を高めるための港湾・街両方での長崎ならではの「おもてなし」イベントや県民上げた歓迎ムードの盛り上げが必要となる。
 上海航路は当面、「ローコスト・エンターテインメント・シップ」をコンセプトとして、中国中間層を主要な顧客ターゲットマーケットと想定していると思われる。この中国で勃興する巨大な顧客層が求める温泉・自然・健康・買い物等を組み合わせた観光プランや中国資本進出も展望した加工団地等を地域として提供し、県内外の需要を創造することが必要である。
 上海航路(定期客船)年200航海、国際観光船(クルーズ客船)年100隻が就航する港となれば、客船=松ヶ枝岸壁、貨物船=柳岸壁だけでは足りず、客船=松ヶ枝岸壁・出島岸壁、貨物船=柳岸壁に加えて、新たな港湾設備を建設する必要が生じた場合には、港湾内に桟橋式デッキを使ったコンパクトなバースを新たに建設することも一つの方法である(大手重工造船所等の技術)。また、長崎港がクルーズ客船などの拠点港を目指すならば、小ヶ倉地区や女神大橋近くの皇后埠頭(ふとう)への新たな国際観光船バースを整備することも考えられる(桟橋式係船岸または埋立による)。
 上海航路が単に長崎、あるいはその先でハウステンボスを擁する佐世保と上海を結ぶ航路である限りは、長崎県の経済力を反映した発展が限界であろう。
 上海航路が長崎県の経済力を超えて大きく発展するためには、九州新幹線長崎ルートや高速道路網との連結が必要であり、これによって①九州観光圏との一体化、②関西・関東への人流・物流の創出が可能となる。これにより、長崎・佐世保はまさに中国大陸と日本の海・空の結節点になりうる。
 ①の場合、他競合港間とで、上海航路が所要時間・船内サービスの魅力・長崎県観光の魅力などの点で少なくとも同等以上の優位性を持つことが条件となる。また、それができない場合でも、競合港との連携・役割分担が必要である。これは、人流機能に最も当てはまり、物流機能についても同様である。
 寄稿にあたり港都創りプロデユーサーデザイナーの松本清氏の協力を得た。

カテゴリー: 未分類   パーマリンク

コメントは受け付けていません。