東京都庁市場問題プロジェクトチーム会議第5回に出席~豊洲市場の事業について

2017.1.25午後5時~7時過ぎ、東京都市場問題プロジェクトチーム会議第5回が開催され、豊洲市場の事業について(豊洲市場の事業継続性・業者の負担と事業継続性)が議論されました。東京都の試算によれば、豊洲市場の事業継続性はあるが、築地業者の豊洲移転意思・築地売却可能価格の点で経営リスクは存在することを私から指摘しました。そもそも東京都中央卸売市場11市場の合計額しか市場会計が存在せず、中期経営計画の計数計画も存在しない中で、中央卸売市場と豊洲市場の計数計画を、戦後市場が始まって以来初めて東京都が作成したもので、豊洲開業後の収益収支・資本収支について検討する試算ができたことの意義は大きいと思います。それによると、豊洲市場の開場後の収支概算は98億(うち減価償却71億円)の赤字、中央卸売市場会計全体でH40年度140億円の経常赤字(減価償却等除くベースで5億円の赤字)となります。会議は全て情報開示されており、インターネット中継は、東京都庁のホームページの「市場問題プロジェクトチーム」のボタンから入っていただければ見れます。なお、ご参考までに、私が発言した冒頭の意見陳述の要点を下記に書き記します。(画像は、25日の会議に関する、1/26日経新聞東京版記事、)http://kikumoriatsufumi.com/wordpress/wp-content/uploads/2017/01/f8e3525a3fcfb8a59d37a1007cf645f5-e1485413456116-320×240.jpg

1. 中央卸売市場の経営と豊洲移転
(1)市場会計と収支見通し
東京都中央卸売市場には、数値による経営計画がこれまで存在せず、今回、プロジェクトから提案して2カ月くらいかけて作成していただいた。但し、原則11市場の合計額で、個別市場の実績も計画も数値は存在しない。そこで、収益金額をベースにして経費配賦を行い、個別市場の収支もある程度把握できるようにしていただいた。その結果、築地は6億円程度の黒字であったが、豊洲は98億円程度の赤字となり、その主因は、2,900億円近くになる建物等の投資額に対する減価償却費であることが分かった。この投資額は、収益的収支との比較において過大であることは言うまでもないが、減価償却前の利益で見ると、特別損益を除外した平年度ベースで収支がほぼ均衡している(若干のマイナス)ことから、年間20億円程度の一般財政補助金が繰り入れられれば、提示いただいた平成42年度までの豊洲の継続可能性はあるが、これが将来にわたって繰り入れられるかどうかは議論の余地がある。投資回収には長い時間がかかる。また、大きな公共施設を建設すると、その後の維持管理・運営費が大きく、収入が維持されないと、後年になって施設の運営が困難になる場合が多い。
(2)経営のリスク要因
また、卸・仲卸業者から支払われる利用手数料は、これら業者の大半が豊洲に移転するという意思決定があって初めて収入として計上できるもので、その前提が、食の安全・安心が確保されない、あるいは水産品の扱い額の趨勢的減少等の理由で万が一にも崩れた場合には、市場経営が厳しくなることは想像に難くなく、その経営リスクを見ておかざるを得ない。

2. 業者の経営負担の増加
仲卸業者の方々が築地から豊洲に移転する場合の経営負担の増加については、各事業者の規模・収益性によって経営負担感は異なるが、施設使用料・空調費・濾過海水使用料・ごみ処理料・警備料金で、増加することとなっている。経営負担の増加により、中には豊洲市場への移転を躊躇したり、撤退する事業者も一部出てくる可能性がある。ただ、その場合には、市場に魅力があれば、公募により新たな事業者が参入することも考えられる。

3. 豊洲市場に求められる民間的経営手法
豊洲市場は、過去にPFI(Private Finance Initiative)導入を検討したことがあるが、これに関する資料は要求したが、情報開示されていない。当時の検討で、VFM(Value for Money)が出なかった可能性がある。豊洲市場は既に建設が完成した施設であるので、仮にこれを活かすならば、維持管理コストを削減するために、指定管理者制度を導入することが必要である。また、空港・水道事業経営に活用されつつある、「コンセッション」の手法を検討しておくことも有益であろう。

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