投資運用の世界

私は25歳の時米国シカゴ大学経営大学院留学を通じて、アメリカの年金運用等投資のプロの世界に興味を持ち、いずれ日本も年金運用ノウハウが必要となる時代が来ると考えていました。私がその時大きな影響を受けたのは、統計学を用いた証券アナリスト資格を取得するために必要な「現代投資理論」だけではなく、ウオーレン・バフェット氏のような企業価値を算定して割安な証券に投資してパフォーマンスを上げる具体的な投資家の世界でした。その頃、シカゴ商業取引所(CME)には弁護士であり、俳優でもあった立志伝中の人物レオ・メラメド会長がおり、「金融先物」で世界をリードしており、投資や金融を学ぶ格好の材料がゴロゴロしていました。ただし、投資運用のプロとなるには、冷徹なまでの目と行動が必要となるため、これを職業とするには困難が伴い、自らリスクを取ることのできるごく少数のプロしか成功していないという現実がありました。しかし、日本にも年金運用が必要となる時代が来ることは予想が付いたので、三井銀行(現三井住友銀行)で先駆けて、当時アメリカで年金運用第三位であったアライアンスキャピタル社と業務提携を結ぶ交渉を行いました。当時の会長との交渉をニューヨークで行い、初めは「日本の若造」が何をしに来たと言わんばかりの態度で臨まれましたが、話している内に打ち解けて、成功裡に終わりました。CMEのレオ・メラメド氏とは同氏が個人で所有していた先物・オプション会社の買収を弁護士を伴って交渉し、無事平和裏に買収することができました。日本の年金を始めとする投資運用の世界は30年前のあの頃と変わっていないと感じます。それは、日本の場合自らリスクを取って運用するプロが少なく、機関投資家等サラリーマンファンドマネジャーとならざるを得ないという側面があるのではないかと思います。ウオーレン・バフェット氏は大都会を避けてネブラスカ州に住み「オマハの賢人」とも呼ばれ、バークシャー・ハザウエイ社という投資会社を運営していますが、1965年から2010年までの平均投資収益が年率20.2%という好パフォーマンスを残しています。毎年出される「To The Shareholders of Berkshire Hathaway Inc.」は、今も投資運用の世界のテキストであると思います。片田舎の町で、夫婦で静かな極めて質素な生活をしながら、投資先企業を絞り込み、9兆円の世界有数のファンドを運用するという同氏の生き方には魅かれるものがあります。

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