企画に生きて~「無」から「有」を生み出す発想

私は、三井銀行(現三井住友銀行)で殆どの時間を企画調査畑で過ごしまし、若い時からやってきた様々な企画案件を振り返り、銀行業界の利益には多大の寄与をしてきたと思いますが、何と自由奔放な発想で企画をすることができたことかと笑ってしまうことがあります。デリバテイブ取引を法制化する金融先物取引法制定を銀行業界として旧大蔵省と進めていた際にも、東京金融先物取引所を設置する方向で検討していたところ、大阪財界から、「大阪にも金融先物取引所を作るべきである」との意見が出されて、どう対処すべきかを考える必要に迫られました。先物・オプションの世界は電子取引なので、世界中のどこに設置しても構いません。理屈上は差金決済が通常なので、事務処理を金融機関の集積する東京で行えば、人も物もさほど必要とせず、札幌でも沖縄でもIT(情報通信)対応ができれば、どこでも設置していいということになります。当然大阪に設置してもいいので、大阪での設置を排除する理屈は成り立ちにくいのです。したがって、①日本に二つの金融先物取引所は必要がない、②金融取引は銀行・証券・保険等が相互に関連していて集積のメリットが大きい、③取引は電子上で行われても、情報の集積は大蔵省・日銀がある東京でないと取引が膨らまず、市場として成り立たない、などの理屈を作ったと思います。企画を練る時に私の議論相手となり、私が多大の影響を受けた人物が、矢作光明氏(後に三井住友銀行副頭取となる)で、彼の口癖が「そんなの簡単だよー」でした。一見難しく見えることでも、分解して良く見れば、あるいは別の方向から光を当てれば、簡単で、それをやるのが企画の役割なのです。時には「一休さん」のように、「とんち」を働かせることがみんなを幸せにするためには必要で、国会議員・大蔵省・消費者団体など様々な立場の人を説得させる論理を駆使したのを覚えています。この時代の企画経験がその後の企画・調査・コンサル・政策提言等を行う際の原点になっています。いわば「無」から「有」を生む能力が企画であり、「知恵」が社会の革新を進めることになるのです。企画能力は、専門的な能力ではなく、営業・組織運営など経営にも不可欠な能力、人間の根源的な能力です。若い人には、企画作成を楽しんでもらいたいと思います。「問題に突き当たり窮した時、一言発言。「簡単だ!」するとそのあと、不思議と知恵が湧いてくる。」(孫正義「危機克服の極意」140ページ)(画像は長崎県の佐世保駅見かけた「貧乏が去る像」。貧乏神をなでた後、頭の猿をなでると貧乏が去る。これも一休さんのような企画です。)

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