2012年世界経済・日本経済の見通し

エコノミストは、自らの勤め先である銀行・証券会社・生命保険会社・投資信託会社等にプラスになるような(少なくともマイナスにならない)経済予測を公表するものです。一年前の今頃の経済紙に掲載されている予測を見て実際と比較してみると良くわかります。私のように自由な立場から経済を語ることができるという特典を活かして(サラリーマンエコノミストでなく、利害が自らに及ぶ可能性のある真剣な投資家の立場とも言えます)、2012年の世界経済・日本経済を考えてみたいと思います。来年のことを言うと鬼が笑うといい、確かに後一か月の間に重大事件が起こる可能性はありますが、このまま推移するとどうなるかを考えてみることも有益でしょう。2011年は欧州債務危機と米国財政問題に揺れた一年でした。これは今に始まったものではなく、2009年のリーマンショックが未解決のまま対処療法を繰り返して来た結果ということができます。欧州債務危機は、財政危機から金融危機に、ギリシア・イタリア・スペインから欧州全体に拡大してきています。金融危機の怖さは、信用不安が一瞬にして広がることにあることは、我が国の一部銀行・証券が一晩で破たん消滅した事実を見ても明らかです。もちろん人間には知恵がありますから、システミックリスクは避けることが不可欠ですが、最悪の事態が避けられたとしても、実体経済に大きな影響を及ぼすことがあります。日本の不良債権問題が解決に10年以上を要し、デフレが20年間続いていることが何よりの証拠だと思います。欧州・米国発の財政・債務危機は、今後10年間にわたり経済の下押し圧力になることはあり得ます。世界経済を今後牽引する地域は、中国・アジア地域と、まだ社会システムとして活力のある米国だと思います。私は、2012年の世界経済成長率(実質)を3%程度(米国1.5%、欧州マイナス0.5%、日本2%、中国8.5%)と予測します。日本は円高・世界経済成長鈍化の影響はあるものの、復興需要が景気を押し上げるからです。欧州・米国・日本・中国・アジアと地域を超えた経済金融支援体制ができて、最悪の事態は避けられると思いたいですが、経済を理由にした政治的覇権が強まり、世界の勢力図が変わる可能性があります。財政金融運営を間違えると国の存立基盤が揺らぐものと考え、政策運営に当たらないといけないと思います。

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