国家を揺さぶる市場~日本経済を安定させるために

1月10日午後7時半NHK「クローズアップ現代」で1時間15分にわたり、欧州危機問題が取り上げられていました。ここではテレビで取り上げられている切り口とは別の観点で考えたいと思います。NHKでこのような番組が放映され警鐘が鳴らされると、暫く経って日本経済が現実に危機にさらされるということを、アジア通貨危機・不良債権問題・バブル崩壊などで経験してきました。これは、兆候が現れた時点では、市場の力(時には暴走)を食い止めることがなかなかできないことを意味しています。また、私のように、経済・金融・株価・為替などの予測を若い時から行ってきている人間には、統計データや各種数値と並んで「市場」を見ることは予想の「的中性」を高めることにつながります。「市場」を構成する大きな存在はこれまでは機関投資家・年金基金等でしたが、今は欧米のヘッジファンドや個人の集団の力が大きくなっています。2009年のリーマンショックや今回の欧州危機がこれまでの金融危機と異なるのは、金融システムを守るために金融機関支援という財政措置を行い、これが財政を悪化させ、国家財政破綻につながるという事実です。国家のデフォルトや財政破綻は過去にも、南米諸国やアジア諸国で起こっていますが、今回のむずかしさは、発展途上国ではなく、先進国で起こる可能性を欧州危機で露呈させてしまったことにあります。1月11日早朝、フィッチ社がフランス国債の格付けの引き下げを年内見送るとのニュースが流れましたが、イタリア・スペイン国債については1~2段階引き下げることを明示しました。私は、日本は国債が海外投資家に保有されていないから暴落しないとは考えません。昔と違い、日本国債の価格を取引する日本国債先物市場がシカゴ・東京・シンガポールにあり、デリバテイブ(派生取引)が現物市場を牽引する可能性が大きいからです。「市場は兆候が現れる前に原因を摘み取る」ことが最善の策で、市場が一旦動き出したら止めることは容易でないことを経験しています。日本が市場の力に勝ち、国民の富を失わないようにするためには、プライマリーバランスの均衡化など本来の財政健全化が必要ですが、市場は待ってくれない可能性があるので、当面は消費税等の税収確保策を急ぐことが必要であるという「切羽詰まった」状況に置かれていると思います。民主主義国家で重要なことは、財政状況を国民に適切に示すことであると考えます。昨晩のNHKの番組は、国家財政を考える重要な材料を国民に提供したと思います。

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