ユダヤ人とギリシア人~マルク・シャガール展を見て

6月17日、長崎県美術館で「生誕125周年記念シャガール展2012」を見ました。6月10日のオープニングセレモニーには出席させていただけなかったので、一週間後の鑑賞となりました。日本人には「愛」をテーマにした解り易い絵が多いのでシャガールが好きな人が多いと思います。私は25歳の時に、印象派の画家が多いアメリカのシカゴ美術館(Art Institute of Chicago)で初めて見た「誕生」を始めとする作品群に魅了されたのを覚えています。今回のシャガール展は、「ユダヤ劇場」と「ダフニスとクロエ」ではないかと思います。ユダヤ劇場は1920年代にロシアのモスクワにユダヤ劇場が設立され、その装飾のためにマルク・シャガールが招待されたものです。ユダヤ人はその後迫害を経験します。「ダフニスとクロエ」は、古代ギリシアの詩人ロンゴスにより2世紀後半~3世紀前半に書かれたとされる、牧歌的な恋愛を語った散文詩で、エーゲ海のレスボス島を舞台に、山羊に養われているところを発見された男児ダフニスと、羊に養育されているところを拾われた女児クロエの二人が出会う物語です。この物語は以前ルーブル美術館で見たコトーの彫刻や、三島由紀夫の「潮騒」のモチーフともなりましたが、シャガールがなぜこの有名な物語をモチーフに一連の版画を制作したか、わかるような気がします。ギリシア文明はヨーロッパ統合の精神的主柱なのです。そして、今朝6月18日早朝、ギリシア再選挙で新民主主義党(ND)が優勢と伝えられました。ギリシア人のプライドとヨーロッパのドイツフランスなど他国との綱引きはまだ続くのではないでしょうか。ギリシアの失業率は25%で、1929年の世界大恐慌時と同じです。

カテゴリー: 世界日本経済   パーマリンク

コメントは受け付けていません。