デザインとアート~上海デザイン曼荼羅

私が番組審議委員長を務めさせていただいている長崎ケーブルメデイア(NCM)から、制作番組「上海デザイン曼荼羅」を送っていただきました。長崎は戦前から上海との関係が深く、「下駄ばきで上海へ」と言われた位、日本郵船の上海丸・長崎丸で上海に行った長崎人は多かったのですが、戦後は長崎市民は上海を知らない人が多く、ケーブルという地域限定の放送局の強みを活かし、この番組を制作していただいたようです。私が中国の現代アートに関心を持ったのは、2004年、長崎県・中国交流のグランドデザインを描くために上海に行ったのが最初でした。中国古来の美術品は上海博物館で膨大な青銅器・陶器磁器のコレクションを見ることができ、同時に来ていたアメリカのヘンリー・キッシンジャー氏にお会いできたことは驚きでした。人民公園内にある上海現代美術館(MoCA)にも行き、ニューヨークの現代美術館(MoMA)とは全く異なる斬新なアートに驚きました。NCM制作の「上海デザイン曼荼羅」は、上海で活躍する様々なデザイナー、アーテイストを取り上げ、中国の同分野の層の厚さを感じさせられました。日本人建築家やファッションデザイナーも多く、「上海で活動することにより、日本と違って世界への情報発信ができる」と発言しているのを聞いて、日本の閉鎖性を感じました。逆に、「上海の建築物や雑貨(グッズ)はまだまだ洗練されておらず、チャンスは多い」ということも言えると思います。意欲ある日本人の若者が、成功のためのチャンスをつかむために、建築・ファッション・絵画・音楽等の分野で、生活・製作コストの安い上海に流れるのも無理はないなと思いました。私は、2008年10月から佐世保新美術館整備基本構想検討委員会の委員長を務めさせていただきましたが、今後地方都市に必要となるのは、美術館併設の美術学校・デザインスクールではないかと思います(シカゴのArt Instituteにも美術学校があった)。デザイン・アートのインフラ・人材があまりにも少ないため、産業競争力が弱くなってきているからです。今後、産業分野を含め、デザイン・アートはアジアを中心として、グローバルな競争時代に入ると思います。日本人が過去培ってきた独創性を維持・発展させられるかに、「物作り日本」の国家としての将来がかかっていると言っても過言ではないと思います。

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